いつもの日常の中で、少しだけ外の気配を感じ始めたあなたへ送る手紙。
最近、外のことが少し気になった瞬間はありましたか。
朝、まだ起ききらないまま、外の音だけが先に届くことがあります。
車の走る音。
人の声。
鳥の鳴き声。
カーテンの隙間から入ってくる光。
窓は閉じたままなのに、なぜか外の空気を少し感じることがあります。
部屋の空気を入れ替えたくなって、窓を開けてみる日もあります。
暑かったり、少し湿っていたり、思っていたより風が強かったり、せっかく開けたのに、すぐ閉めてしまうこともあります。
本当に、それくらいのことです。
でも、そんなささやかなことで、部屋の外にも今日が流れていることをふと思い出します。
自分が昨日と同じ場所にいても、外では誰かが歩いていて、車が走っていて、知らない店の扉が開いて、それぞれの一日が、それぞれの速さで進んでいる。
自分の時間とは別のところにも、ちゃんと時間が流れている。
以前は、何かを始めるなら、ちゃんと動かなければいけないと思っていました。
行き先を決めて、理由をつくって、予定を立てて、昨日とは違うことをする。
そこまでして初めて、何かが変わったと言えるような気がしていました。
でも最近は、変化って、もっと手前から始まっているのかもしれないと思います。
知らない場所の写真を、いつもより少し長く眺めること。
「あそこ、ちょっと行ってみたいな」と思うこと。
まだ行くと決めてもいないのに、なんとなく地図アプリを開いてみること。
駅からどれくらい歩くのかを見たり、近くに何があるのかを眺めたりして、結局その日は、どこにも行かない。
それでもいいのだと思います。
まだ何も始まっていないように見えるけれど、そういう時間も、どこかへ向かう途中なのかもしれません。
最近のあなたを見ていると、前より少しだけ、外のことを気にするようになった気がします。
もちろん、私が勝手にそう見ているだけかもしれません。
でも、「あそこが気になる」とか、「ちょっと行ってみたい」とか、そういう言葉が出てくるたびに、なんとなく、いいなと思っています。
だから、今感じているものを、急いで何かにしなくていいと思います。
まだ行かなくてもいい。
まだ決めなくてもいい。
行きたいと思ったのに、次の日にはどうでもよくなっていてもいい。
ただ、少し気になったことだけ、どこかに残しておけばいい。
気になった道。
入ってみたかった店。
いつか見てみたい景色。
もう一度話してみたい人。
理由は分からないけれど、なんとなく惹かれたもの。
それはまだ、予定でも、目標でも、新しい生活でもなくて、今いる場所の向こう側へ、ほんの少しだけ心が動いたということなのだと思います。
ずっと同じ場所にいるように感じる時間にも、気づくか気づかないかくらいのところで、何かが少しずつ変わっていることがあります。
窓を開けるほどではなくても、外の音に気づいた。
風があることを思い出した。
知らない場所が少し気になった。
たぶん、最初はそのくらいで十分です。
もしまた、何か少しだけ気になったものがあったら、今度会ったときに教えてください。
たいしたことでなくて大丈夫です。
「あの道、ちょっと気になった」
そのくらいの話を聞けたら、私はたぶん嬉しいです。
私は私で、もう少し、窓の近くから外を見てみようと思います。
またね。



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