投稿

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雀の鳴く距離
外から聞こえていると思っていた雀の声は、部屋の中にあった。一羽を外へ出すと、今度はもう一羽が入ってくる。内と外、近さと遠さが何度も入れ替わる、二羽の雀との短い時間。 -
父がいなくなるので、鍋をする
父に残された時間は、あと三か月だった。それでも僕たちは旅行へ行かず、庭に水をやり、スーパーへ行き、鍋の肉を選んだ。限りある時間のなかで残っていく、何でもない一日の話。 -
一万語で死ぬ人生
言葉を使うたび、病変が進む。残された言語活動量は一万語前後。言葉を節約し始めた彼は、ある日「セミは一週間で死ぬ」という常識が正確ではないことを知る。 -
空席のある予定
一人でもできる。でも、誰かとならたぶんやる。散歩、映画、本屋、旅、制作。まだ誰とも決まっていない、途中参加できるやりたいことを置いておくページです。 -
心のお腹は、人ひとり分
妹の心のお腹には、二十八本の歯があった。父と母が言わなかったことを食べるたび、家の中から争う声は消えていく。やがて妹は、そこに座ったまま家族の人数からいなくなった。 -
理由のない残り時間を延長する
捨てようとして初めて、まだ終わっていなかった時間に気づくことがある。物に残っているのは記憶そのものではなく、記憶へ戻るための入口なのかもしれない。なぜか捨てられないものについて。 -
あける
戸を開ける。閉じる。また開ける。そのたび、向こう側に違うものが現れる、小さなWEBゲーム。 -
可搬する輪郭
自分の輪郭は、壁ではなく扉なのかもしれない。人との出会いによって形を変えながら、それでも失いたくない自分を持ち続ける。境界と変化の関係。 -
その人の続きを少しだけ
人を早く理解しすぎなくてもいい。一度会っただけでは分からないところが残るからこそ、もう少し知りたくなる。帰ったあとに一つだけ思い出す、小さな瞬間について。 -
Quiet Letter 9
同じものを好きでなくても、同じ速度で歩かなくてもいい。違う世界を持ったまま、ときどき出会い直せる関係について考えました。 -
Travel Guide: 大阪を少しだけ知っている
大阪出身だと話すと、よく聞かれる「大阪でおすすめの場所や店は?」。そのたびに地図を開いて送っていた、食べる場所、喫茶店、映画館、美術館、本屋、市場、温泉などをまとめた個人的な大阪案内です。 -
きょうがまだ帰ってこない
昨日のことは全部覚えている。でも、そこにいた自分だけが少し遠い。写真、レシート、木陰、ひぐらし、右手の感触。残されたものを辿りながら、昨日という他人から自分へ帰っていく。 -
本人が覚えていないところを、少しずつ覚えていく
人を気にし始める瞬間は、特別な出来事ではなく、その人自身も覚えていないような小さな仕草から始まる。何気ない「ありがとう」、立ち止まる場所、誰にも向けていない表情。少しずつ覚えていくことで、その人の輪郭が見えてくる。 -
Disconnect Guide: 水の中で、世界を少し遠くする
通知もニュースも、今すぐ知らなくていいことも、いったん浴室の外へ。水に身体を預けながら、世界との距離を少しだけ取り戻すためのDisconnect Guide。 -
声とアルブメンのあいだ
人は、顔を見る前に、その人を知ってしまうことがある。声、呼吸、体温、匂い。身体から先にこぼれたものが、触れるより前に誰かの内側へ入り込んでいく。 -
それぞれの一日を持ち寄る
誰かを好きになっても、一人だった頃の自分を全部終わらせなくていい。 それぞれの一日を過ごし、また会ったときに少しだけ持ち寄る。そんな関係について。 -
プリンは四回目もそこにいた
身体はベッドにあるのに、意識だけが先へ歩いていく。朝、人、理想の一日。現実に追いつけない身体のそばで、それでも「人生を楽しみたい」という感覚だけが残っていた。 -
いらんけど、俺が持っとく
楽しみにしていた店は、臨時休業だった。予定をなくした二人は、知らない道を歩き、青いボタンを拾い、壊れた傘のまま雨に濡れる。いらないはずの一日が、ポケットの中に残るまでの話。 -
大切な人としたい10のこと
知らない町を歩く。本屋に寄る。雨の日にも出かける。同じ部屋で別々のことをする。特別なことではなく、いつか細かいところまで覚えているような日を、大切な人と少しずつ増やしていきたい。 -
Quiet Letter 8
夏の終わりは、いつだったのでしょう。最後の蝉、最後のそうめん、最後に冷房をつけた夜。まだ残っている夏の気配を見つめる、八月の終わりの手紙。 -
黒く湿った、誰のものでもないあいだ
学校へ向かう途中にあった、小さな庭のような場所。猫が眠り、虫が潜り、草が光を受けていた。やがて土地は工事で姿を変える。それでも、そこにいたものたちの時間は完全には消えなかった。 -
それから、手渡さなくなった
見ないようにするほど、覚えてしまう。彼女の手、その癖、触れた一瞬。距離を守ろうとするほど、二人の間には消せないものが増えていった。 -
世界を見る窓
写真、映画、テレビ、スマートフォン。時代や技術によって変化してきた画面のかたちを、アスペクト比、作品例、比率マップ、比較ツールからたどるアーカイブ。 -
悲嘆検索結果
自分がいなくなった時、悲しむ人は何人いるのか。数字で存在を証明しようとした人間が、最後に見つけたものとは。 -
空白の羽根の手触り
その夏、彼は冷蔵庫の麦茶をどこに置いたか思い出せなかった。身体は覚えていた。頭だけが遅れていた。小さな羽音とともに、失われたものの輪郭が静かに浮かび上がる。 -
腐敗する世界で、僕だけが土になれない。
人は死んだ後、どこへ行くのか。少年は祖父の死をきっかけに、身体が消えることと、存在が消えることは同じではないと知っていく。森の中で見つけた腐敗したものは、終わりではなく、別の生命へ渡る途中の姿だった。 -
未登録の未分類 – 趣味と呼ぶ前の、あなたの中にある好きについて
「趣味は何ですか?」という問いから、自分が本当に時間を使っているものについて考える。写真、映画、散歩。まだ趣味と呼んでいないけれど、何度も戻ってしまうものには、自分らしい興味の輪郭が隠れている。 -
Loading: 不在確認
朝は始まっていた。冷蔵庫も洗濯機もテレビも動いている。それでも、ひとつひとつの日常にうまく接続できない。普通に戻ろうとする小さな行動の隙間から、言葉にならない危うさがこぼれていく朝の話。 -
Quiet Letter 7
いつもの日常の中で、少しだけ外の気配を感じ始めたあなたへ。まだ行かなくても、まだ決めなくてもいい。少し気になったことだけ、どこかに残しておけばいい。 -
住所、七文字先の月
透明な傘を一本持って出た男。逮捕時の告知から、七文字だけが抜けていた。小さな手続のずれは、記録、住所、警察、そして月の位置へと静かに重なっていく。
