短編– tag –
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プリンは四回目もそこにいた
身体はベッドにあるのに、意識だけが先へ歩いていく。朝、人、理想の一日。現実に追いつけない身体のそばで、それでも「人生を楽しみたい」という感覚だけが残っていた。 -
いらんけど、俺が持っとく
楽しみにしていた店は、臨時休業だった。予定をなくした二人は、知らない道を歩き、青いボタンを拾い、壊れた傘のまま雨に濡れる。いらないはずの一日が、ポケットの中に残るまでの話。 -
黒く湿った、誰のものでもないあいだ
学校へ向かう途中にあった、小さな庭のような場所。猫が眠り、虫が潜り、草が光を受けていた。やがて土地は工事で姿を変える。それでも、そこにいたものたちの時間は完全には消えなかった。 -
それから、手渡さなくなった
見ないようにするほど、覚えてしまう。彼女の手、その癖、触れた一瞬。距離を守ろうとするほど、二人の間には消せないものが増えていった。 -
悲嘆検索結果
自分がいなくなった時、悲しむ人は何人いるのか。数字で存在を証明しようとした人間が、最後に見つけたものとは。 -
空白の羽根の手触り
その夏、彼は冷蔵庫の麦茶をどこに置いたか思い出せなかった。身体は覚えていた。頭だけが遅れていた。小さな羽音とともに、失われたものの輪郭が静かに浮かび上がる。 -
Loading: 不在確認
朝は始まっていた。冷蔵庫も洗濯機もテレビも動いている。それでも、ひとつひとつの日常にうまく接続できない。普通に戻ろうとする小さな行動の隙間から、言葉にならない危うさがこぼれていく朝の話。 -
住所、七文字先の月
透明な傘を一本持って出た男。逮捕時の告知から、七文字だけが抜けていた。小さな手続のずれは、記録、住所、警察、そして月の位置へと静かに重なっていく。 -
1センチ先の紫音
八月の午後、信号が青になった。みんなが渡るなか、私だけがその場に残っていた。地面が一センチ遠ざかり、街の音が遅れて届きはじめる。現実のすぐ先に沈む、静かな水中の短編。 -
午後の所在
午後二時七分、白昼夢への一時滞在が申請された。睡眠状態は覚醒。現実接続率は少しずつ低下し、やがて「現在地」は白昼夢を示す。帰還しようとしたとき、システムは告げる。同一地点への復帰は申請できません。 -
一度も触れられなかった
触れた場所の熱は、やがて薄れていく。最後まで残ったのは、一度も触れられなかったところだった。触覚と距離、そのあいだに残る空白を描く短編。 -
人並みという、存在しない列
「普通」「人並み」「みんな」。誰も正確な基準を知らないのに、私たちはそこから遅れている気がする。行き先も先頭も分からない「人並み」の列についての、短い寓話。 -
十五歳一名分、三か月後まで
疲れた日は、語彙が減る。満腹になると、未来が遠ざかる。十五歳で自分の三か月後を食べた少女は、十七歳の夜、誰かの未来を入れた保冷箱を港へ運ぶ。 -
出生時、私は複数形だった
赤の他人に身体を預け、自分の疲労を見知らぬ誰かへ分散する施術所《BODY COMMONS》。重さを手放すほど、他者の痛みがこちらへ流れ込んでくる。身体の所有、記憶、孤独、そして人間がどこまで一つなのかを描く短編。 -
三年遅れの未読通知
出来事が終わる時刻と、身体がそれを終える時刻は一致しない。脚に残る歩いた距離、胃に残る食事の温度、閉じた画面の奥で続く思考。翌朝、身体は昨日の日付がついた反応を届けてくる。けれど左肩に届いたのは、覚えていない三年前の痛みだった。 -
十八分間の失踪
目的地へ向かう十八分のあいだ、私は自分の人生から外れていた。遅れて瞬く車窓の顔、何度も戻る到着時刻、別の場所に現れる男。移動中だけ存在する、名前のない自分をめぐる短編。 -
最後の水を所有する人
消える直前のものを記録し続ける男。失われる場所や人の最後を残す行為は、いつしか他者の時間を自分のものにすることと重なっていく。記録することの愛情と暴力を描いた短編小説。 -
途中のない途中
草がある。石がある。家がある。そこには誰かがいた時間の跡だけが残っている。消えたものではなく、残されたものから世界を見る短編。 -
土の中の予定
本棚の奥から、一冊の文庫本を抜いた。 背表紙には薄く埃が積もり、指でなぞったところだけ少し色が変わった。ページを開く。何枚かめくったところで小さな付箋が落ちた。そこには...... -
灰になる前の孤島
誰にも期待されず、何者にもならなくていい駅裏の喫煙所。火事で失われ、美しい意味を与えられていく場所と、そこに逃げていた男の記憶を描きます。 -
知らないものにはまだ名前がないだけ
引っ越した部屋のノートに、毎朝ひとつ増えていく見知らぬ文章。見えないものは存在しないのか、それともまだ名前がないだけなのか。 -
心は死んでいる。身体はとうに崩れている。
理由がなくても朝は来る。世界が昨日の続きを始めるなか、崩れた心と身体を抱えた僕が、理由のない時間を生きていく短編小説です。 -
雨の匂いを返しに行く。
再会したのは3年後の六月、雨の日の喫茶店だった。変わった世界と曖昧な記憶のあいだで、あの日の匂いと続きを探す物語です。 -
最初から終わり方だけは分かっていた。
映画も旅も部屋も、終わりが決まっているから安心できた。秋の喫茶店で出会った彼女との恋を通して、終わりを管理したい心を描きます。 -
熊を見に行くついでに食べられてくるね
「熊を見に行くついでに食べられてくるね」。冗談のような言葉を入口に、町へ近づく熊と、人の暮らしに潜む諦念を描く短編小説です。
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