読みもの– tag –
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空白の羽根の手触り
その夏、彼は冷蔵庫の麦茶をどこに置いたか思い出せなかった。身体は覚えていた。頭だけが遅れていた。小さな羽音とともに、失われたものの輪郭が静かに浮かび上がる。 -
腐敗する世界で、僕だけが土になれない。
人は死んだ後、どこへ行くのか。少年は祖父の死をきっかけに、身体が消えることと、存在が消えることは同じではないと知っていく。森の中で見つけた腐敗したものは、終わりではなく、別の生命へ渡る途中の姿だった。 -
未登録の未分類 – 趣味と呼ぶ前の、あなたの中にある好きについて
「趣味は何ですか?」という問いから、自分が本当に時間を使っているものについて考える。写真、映画、散歩。まだ趣味と呼んでいないけれど、何度も戻ってしまうものには、自分らしい興味の輪郭が隠れている。 -
Loading: 不在確認
朝は始まっていた。冷蔵庫も洗濯機もテレビも動いている。それでも、ひとつひとつの日常にうまく接続できない。普通に戻ろうとする小さな行動の隙間から、言葉にならない危うさがこぼれていく朝の話。 -
Quiet Letter 7
いつもの日常の中で、少しだけ外の気配を感じ始めたあなたへ。まだ行かなくても、まだ決めなくてもいい。少し気になったことだけ、どこかに残しておけばいい。 -
住所、七文字先の月
透明な傘を一本持って出た男。逮捕時の告知から、七文字だけが抜けていた。小さな手続のずれは、記録、住所、警察、そして月の位置へと静かに重なっていく。 -
1センチ先の紫音
八月の午後、信号が青になった。みんなが渡るなか、私だけがその場に残っていた。地面が一センチ遠ざかり、街の音が遅れて届きはじめる。現実のすぐ先に沈む、静かな水中の短編。 -
午後の所在
午後二時七分、白昼夢への一時滞在が申請された。睡眠状態は覚醒。現実接続率は少しずつ低下し、やがて「現在地」は白昼夢を示す。帰還しようとしたとき、システムは告げる。同一地点への復帰は申請できません。 -
一度も触れられなかった
触れた場所の熱は、やがて薄れていく。最後まで残ったのは、一度も触れられなかったところだった。触覚と距離、そのあいだに残る空白を描く短編。 -
人並みという、存在しない列
「普通」「人並み」「みんな」。誰も正確な基準を知らないのに、私たちはそこから遅れている気がする。行き先も先頭も分からない「人並み」の列についての、短い寓話。 -
十五歳一名分、三か月後まで
疲れた日は、語彙が減る。満腹になると、未来が遠ざかる。十五歳で自分の三か月後を食べた少女は、十七歳の夜、誰かの未来を入れた保冷箱を港へ運ぶ。 -
出生時、私は複数形だった
赤の他人に身体を預け、自分の疲労を見知らぬ誰かへ分散する施術所《BODY COMMONS》。重さを手放すほど、他者の痛みがこちらへ流れ込んでくる。身体の所有、記憶、孤独、そして人間がどこまで一つなのかを描く短編。 -
三年遅れの未読通知
出来事が終わる時刻と、身体がそれを終える時刻は一致しない。脚に残る歩いた距離、胃に残る食事の温度、閉じた画面の奥で続く思考。翌朝、身体は昨日の日付がついた反応を届けてくる。けれど左肩に届いたのは、覚えていない三年前の痛みだった。 -
十八分間の失踪
目的地へ向かう十八分のあいだ、私は自分の人生から外れていた。遅れて瞬く車窓の顔、何度も戻る到着時刻、別の場所に現れる男。移動中だけ存在する、名前のない自分をめぐる短編。 -
今日を終える前に、部屋の光をひとつ減らす
夜になっても昼の明るさから抜け出せないときは、部屋の照明をひとつだけ消してみる。光を減らすことは、頭より遅れて今日を終える身体へ送る、小さな合図になる。 -
最後の水を所有する人
消える直前のものを記録し続ける男。失われる場所や人の最後を残す行為は、いつしか他者の時間を自分のものにすることと重なっていく。記録することの愛情と暴力を描いた短編小説。 -
Ami – 傷ついても見捨てず、向き合う物語
傷ついても、終わりだと思っても、人は誰かと向き合い戻ってこられる。創作者Amiさんの物語と、その奥にある弱さ・責任・愛・再生をたどります。 -
Quiet Letter 6
洗濯物が乾くまでの時間には、目には見えない変化があります。風を受け、少しずつ形を変えていく布のように、人の時間にもまだ途中にあるものがあります。完成する前の静かな時間を見つめる手紙。 -
身体は記憶する
傷は、失われたものではなく、身体が通過した時間の記録なのかもしれない。皮膚の下にあるもの、言葉になる前の痛みや経験を、身体は静かに残し続けている。 -
眠る前まで、まだ今日だった。
休日の夜、眠ることを惜しく感じる理由をたどる記録。終わらせたくないのは一日ではなく、まだ何かを選べる状態なのかもしれない。 -
晴れを、良い天気と呼べなくなった
雨が止んでも、自由に外へ出られる夏は戻らなかった。雨から暑さへ変わった一か月を、日本各地から大阪、山の近くの暮らしまでたどりながら記録する。晴れを、良い天気と呼べなくなった|雨から猛暑へ変わった夏の記録 -
Quiet Letterが生まれる前に
Quiet Letter Seriesを書く前から、私の中には名前のついていない感覚があった。誰にも記録されない一日にも、その日を生きていた自分がいる。この文章では、シリーズが生まれる前について触れます。 -
星を戻さず、水を見ていた
星を戻し、失われた生命を蘇らせる力を持つ、名のない存在。世界へ介入するたびに別の傷が生まれることを知ったそれは、やがて星ではなく、石の窪みに残る小さな水を見るようになる。救済、選択、喪失、そして自分を必要としない世界についての物語。 -
途中のない途中
草がある。石がある。家がある。そこには誰かがいた時間の跡だけが残っている。消えたものではなく、残されたものから世界を見る短編。 -
土の中の予定
本棚の奥から、一冊の文庫本を抜いた。 背表紙には薄く埃が積もり、指でなぞったところだけ少し色が変わった。ページを開く。何枚かめくったところで小さな付箋が落ちた。そこには...... -
パンくず一粒分の一日
部屋はまだ、夜の続きにあった。カーテンの隙間から入る光が、床の上に細い線を作っている。机の上には一冊の本が伏せられていた。読みかけなのか、読み終えたのかは分からない。ページの間には、古い紙の栞が挟まっている。 -
過去の自分を糧にする。
「以前の自分に戻る」ことを目標にするのではなく、過去の自分を糧として生かす。変化した身体や感覚と向き合いながら、再構築と再設計を通して、今の自分に合った生き方を考えます。 -
Quiet Letter 5
デンマークで交わした約束が、二年半の時間を経て大阪で実現しました。帰国前の短い朝、覚えていてくれた好きなもの、街を一緒に歩いた記憶、そして台湾での次の再会について綴る、親愛なる友人への手紙です。 -
休養を「技術」として学ぶ
休んでも疲れが取れないのは、回復方法が現在の疲労と合っていないからかもしれない。身体・認知・感情・慢性的な緊張を見分け、自分に必要な休養を選ぶ方法と、長く活動を続けるための回復システムを整理する。 -
灰になる前の孤島
誰にも期待されず、何者にもならなくていい駅裏の喫煙所。火事で失われ、美しい意味を与えられていく場所と、そこに逃げていた男の記憶を描きます。
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