読みもの– tag –
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本人が覚えていないところを、少しずつ覚えていく
人を気にし始める瞬間は、特別な出来事ではなく、その人自身も覚えていないような小さな仕草から始まる。何気ない「ありがとう」、立ち止まる場所、誰にも向けていない表情。少しずつ覚えていくことで、その人の輪郭が見えてくる。 -
Disconnect Guide: 水の中で、世界を少し遠くする
通知もニュースも、今すぐ知らなくていいことも、いったん浴室の外へ。水に身体を預けながら、世界との距離を少しだけ取り戻すためのDisconnect Guide。 -
声とアルブメンのあいだ
人は、顔を見る前に、その人を知ってしまうことがある。声、呼吸、体温、匂い。身体から先にこぼれたものが、触れるより前に誰かの内側へ入り込んでいく。 -
それぞれの一日を持ち寄る
誰かを好きになっても、一人だった頃の自分を全部終わらせなくていい。 それぞれの一日を過ごし、また会ったときに少しだけ持ち寄る。そんな関係について。 -
プリンは四回目もそこにいた
身体はベッドにあるのに、意識だけが先へ歩いていく。朝、人、理想の一日。現実に追いつけない身体のそばで、それでも「人生を楽しみたい」という感覚だけが残っていた。 -
いらんけど、俺が持っとく
楽しみにしていた店は、臨時休業だった。予定をなくした二人は、知らない道を歩き、青いボタンを拾い、壊れた傘のまま雨に濡れる。いらないはずの一日が、ポケットの中に残るまでの話。 -
大切な人としたい10のこと
知らない町を歩く。本屋に寄る。雨の日にも出かける。同じ部屋で別々のことをする。特別なことではなく、いつか細かいところまで覚えているような日を、大切な人と少しずつ増やしていきたい。 -
Quiet Letter 8
夏の終わりは、いつだったのでしょう。最後の蝉、最後のそうめん、最後に冷房をつけた夜。まだ残っている夏の気配を見つめる、八月の終わりの手紙。 -
黒く湿った、誰のものでもないあいだ
学校へ向かう途中にあった、小さな庭のような場所。猫が眠り、虫が潜り、草が光を受けていた。やがて土地は工事で姿を変える。それでも、そこにいたものたちの時間は完全には消えなかった。 -
それから、手渡さなくなった
見ないようにするほど、覚えてしまう。彼女の手、その癖、触れた一瞬。距離を守ろうとするほど、二人の間には消せないものが増えていった。 -
悲嘆検索結果
自分がいなくなった時、悲しむ人は何人いるのか。数字で存在を証明しようとした人間が、最後に見つけたものとは。 -
空白の羽根の手触り
その夏、彼は冷蔵庫の麦茶をどこに置いたか思い出せなかった。身体は覚えていた。頭だけが遅れていた。小さな羽音とともに、失われたものの輪郭が静かに浮かび上がる。 -
腐敗する世界で、僕だけが土になれない。
人は死んだ後、どこへ行くのか。少年は祖父の死をきっかけに、身体が消えることと、存在が消えることは同じではないと知っていく。森の中で見つけた腐敗したものは、終わりではなく、別の生命へ渡る途中の姿だった。 -
未登録の未分類 – 趣味と呼ぶ前の、あなたの中にある好きについて
「趣味は何ですか?」という問いから、自分が本当に時間を使っているものについて考える。写真、映画、散歩。まだ趣味と呼んでいないけれど、何度も戻ってしまうものには、自分らしい興味の輪郭が隠れている。 -
Loading: 不在確認
朝は始まっていた。冷蔵庫も洗濯機もテレビも動いている。それでも、ひとつひとつの日常にうまく接続できない。普通に戻ろうとする小さな行動の隙間から、言葉にならない危うさがこぼれていく朝の話。 -
Quiet Letter 7
いつもの日常の中で、少しだけ外の気配を感じ始めたあなたへ。まだ行かなくても、まだ決めなくてもいい。少し気になったことだけ、どこかに残しておけばいい。 -
住所、七文字先の月
透明な傘を一本持って出た男。逮捕時の告知から、七文字だけが抜けていた。小さな手続のずれは、記録、住所、警察、そして月の位置へと静かに重なっていく。 -
1センチ先の紫音
八月の午後、信号が青になった。みんなが渡るなか、私だけがその場に残っていた。地面が一センチ遠ざかり、街の音が遅れて届きはじめる。現実のすぐ先に沈む、静かな水中の短編。 -
午後の所在
午後二時七分、白昼夢への一時滞在が申請された。睡眠状態は覚醒。現実接続率は少しずつ低下し、やがて「現在地」は白昼夢を示す。帰還しようとしたとき、システムは告げる。同一地点への復帰は申請できません。 -
一度も触れられなかった
触れた場所の熱は、やがて薄れていく。最後まで残ったのは、一度も触れられなかったところだった。触覚と距離、そのあいだに残る空白を描く短編。 -
人並みという、存在しない列
「普通」「人並み」「みんな」。誰も正確な基準を知らないのに、私たちはそこから遅れている気がする。行き先も先頭も分からない「人並み」の列についての、短い寓話。 -
十五歳一名分、三か月後まで
疲れた日は、語彙が減る。満腹になると、未来が遠ざかる。十五歳で自分の三か月後を食べた少女は、十七歳の夜、誰かの未来を入れた保冷箱を港へ運ぶ。 -
出生時、私は複数形だった
赤の他人に身体を預け、自分の疲労を見知らぬ誰かへ分散する施術所《BODY COMMONS》。重さを手放すほど、他者の痛みがこちらへ流れ込んでくる。身体の所有、記憶、孤独、そして人間がどこまで一つなのかを描く短編。 -
三年遅れの未読通知
出来事が終わる時刻と、身体がそれを終える時刻は一致しない。脚に残る歩いた距離、胃に残る食事の温度、閉じた画面の奥で続く思考。翌朝、身体は昨日の日付がついた反応を届けてくる。けれど左肩に届いたのは、覚えていない三年前の痛みだった。 -
十八分間の失踪
目的地へ向かう十八分のあいだ、私は自分の人生から外れていた。遅れて瞬く車窓の顔、何度も戻る到着時刻、別の場所に現れる男。移動中だけ存在する、名前のない自分をめぐる短編。 -
今日を終える前に、部屋の光をひとつ減らす
夜になっても昼の明るさから抜け出せないときは、部屋の照明をひとつだけ消してみる。光を減らすことは、頭より遅れて今日を終える身体へ送る、小さな合図になる。 -
最後の水を所有する人
消える直前のものを記録し続ける男。失われる場所や人の最後を残す行為は、いつしか他者の時間を自分のものにすることと重なっていく。記録することの愛情と暴力を描いた短編小説。 -
Ami – 傷ついても見捨てず、向き合う物語
傷ついても、終わりだと思っても、人は誰かと向き合い戻ってこられる。創作者Amiさんの物語と、その奥にある弱さ・責任・愛・再生をたどります。 -
Quiet Letter 6
洗濯物が乾くまでの時間には、目には見えない変化があります。風を受け、少しずつ形を変えていく布のように、人の時間にもまだ途中にあるものがあります。完成する前の静かな時間を見つめる手紙。 -
身体は記憶する
傷は、失われたものではなく、身体が通過した時間の記録なのかもしれない。皮膚の下にあるもの、言葉になる前の痛みや経験を、身体は静かに残し続けている。
