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知らないものにはまだ名前がないだけ
引っ越した部屋で見つかる一枚の付箋。誰が書いたのか分からない短い文章は、少しだけ現実と重なっている。見えないものには、本当に名前がないだけなのかもしれない。 -
Quiet Letter 4
湿気をまとった日に送る手紙。 最近、夏が始まったと思った瞬間はありましたか。 ある休みの日、一日中家にいて、気づけば外は夕方になっていました。 その日、何度エアコンのリモコンに手を伸ばしたことか。 暑いからつける。 少し涼しくなってきたから消... -
Quiet Letter 3
記憶に再会するために送る手紙。 最近、忘れものをしたことはありますか? 財布とか。 傘とか。 買い物のメモとか。 昨日考えていたこととか。 今日の朝食とか。 誰かと話した内容とか。 そういうものです。 私は今日、シンクに置かれたカップを見て、 「... -
拝啓、世界のみなさまへ
あなたは先に行っていい。私はゆっくり歩くから。違う速度で生きる誰かへ向けた、小さな手紙。 -
心は死んでいる。身体はとうに崩れている。
だから、生きている理由を探すのはやめた。 探したところで見つからないし、見つかったところで明日には忘れてしまう。 人は理由があれば生きられると言う。 けれど僕は、理由がなくても朝が来ることを知っていた。 カーテンの隙間から差し込む光。 冷蔵庫... -
Quiet Letter 2
六月の途中に送る手紙。 最近、立ち止まったことはありますか? 六月になると、世界が少し曖昧になる。 春はもう終わっている。 けれど夏と呼ぶには、まだ少し早い。 天気予報は外れるし、傘を持って出るべきか迷う日も多い。 晴れていると思ったら雨が降... -
雨の匂いを返しに行く。
再会したのは3年後の六月だった。 雨が降っていた。 駅前の喫茶店は変わらず営業していた。 変わったのは値段くらいだった。 ブレンドコーヒーは350円から560円になっていた。 世界中で物価が上がっているらしい。 ニュースでは毎日そんな話をしていた。 ... -
最初から終わり方だけは分かっていた。
だから安心していた。 映画は2時間で終わる。 住み慣れた部屋も、荷物を運び出せばただの空間に戻る。 旅は帰りの高速道路に乗った瞬間から思い出になる。 僕はそういうものが好きだった。 終わりが決まっているもの。 終わり方が分かるもの。 終わりを管... -
熊を見に行くついでに食べられてくるね
近年は全国的にクマの出没や人身被害が増え、里山と人間社会の境界が曖昧になっている。だからこの筋は、現代日本の不穏さと個人の諦念が同時に乗る。 -
Quiet Letter 1
眠れない夜や少し疲れた日に送る手紙。 最近、眠れていますか? 私は昨日、生卵を割ったらシンクに落ちて、すくいあげようとしたら黄身が割れました。 仕方がないので無かったことに。 こんなの初めてです。 しばらくシンクを眺めてしまいました。 もった...
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