午後の所在

午後の光が差し込む無人の部屋。開いたノートと飲みかけのグラス、空の椅子があり、白いカーテンの向こうに誰もいないホームのような風景が見える。

白昼夢滞在許可申請書

申請区分:一時滞在
睡眠状態:覚醒
現実接続率:94%
帰還予定時刻:未定
申請理由:ぼんやりしていたため

14:07 申請受付

現実接続率は93%

[現実へ戻る] [あとで]

申請者は「あとで」を選択した。

14:08 睡眠観察記録

被験者は窓の外を見ている。呼びかけには反応あり。睡眠所見なし。夢報告あり。

「何が見えますか」

「電車」

「ここに電車はありません」

「知っています」

14:10 現在地確認

本人申告:駅
実際の所在地:自宅

誰もいないホーム。

電車は来ない。

案内表示だけが、

まもなく到着します

を繰り返している。

14:17

被験者が笑った。

「どうしましたか」

「懐かしかったので」

「何が?」

「まだ行ったことがない場所が」

現実接続率:81%

白昼夢滞在情報

滞在開始:14:07
睡眠:なし
夢:継続中
帰還予定:未入力

14:22

帰還処理を開始しますか?

[開始する] [あとで]

あとで

申請区分が変更されました。

一時滞在

滞在

変更理由:[         ]

昼の交差点。

信号は青い。

横断歩道の白線が一本だけ、道路を渡らずに歩道を曲がっている。

そのまま、閉じた店のシャッターの下へ続いている。

歩行者用の音だけが鳴っている。

知らない部屋。

テーブルに、飲みかけの水が二つ置いてある。

椅子は一脚しかない。

片方のグラスだけ、まだ冷たい。

14:31 記録異常

申請受付記録:14:31
観察開始記録:14:08

記録担当者が時刻の修正を申請した。

却下

理由:時刻は正常です。

14:33

「今、何時ですか」

「14時33分です」

「それは、こっちの時間ですか」

返答は記録されていない。

現実接続率:63%

██████░░░░

現実復帰支援

復帰先を選択してください。

[自宅] [職場] [現在地] [その他]

現在地

現在地を検索しています……

候補が1件見つかりました。

現在地:白昼夢

さっきと同じホーム。

今度は、一人だけ立っている。

こちらに背を向けている。

胸元に職員証が見える。

白昼夢管理課

14:41

被験者が立ち上がった。

「どこへ行くんですか」

「戻ります」

「どこへ?」

「向こう」

14:43

被験者不在。

退出記録なし。

扉の開閉なし。

窓の開閉なし。

システム通知:

申請者が白昼夢へ移動しました。

記録担当者:

「移動ではなく、帰還では?」

システム:

入力内容を確認してください。

現実復帰届

復帰先:[         ]
復帰日時:[        ]
復帰理由:[        ]

現在地:白昼夢

同一地点への復帰は申請できません。

戻る場所を入力してください。

[             ]

午後の光。

机の上に、開いたノートと冷めた飲み物がある。

椅子には誰も座っていない。

ノートには一行だけ書かれている。

あとで戻る。

その下に、別の筆跡。

いつ?

さらに下。

あとで。

現実接続率:18%

帰還処理を自動実行します。

██████████

100%

帰還確認

睡眠状態:覚醒
現在地:確認済み
申請者:確認済み

現実復帰処理は正常に完了しました。

観察室。

椅子が一脚。

誰も座っていない。

窓の外は昼。

白いカーテンが、少しだけ揺れている。

現実接続率:100%

申請者:確認済み

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