Quiet Letter 3

記憶に再会するための手紙。シンクに残されたコーヒーカップを描いたミニマルなレターデザイン。

記憶に再会するために送る手紙。

目次

最近、忘れものをしたことはありますか?

財布とか。

傘とか。

買い物のメモとか。

昨日考えていたこととか。

今日の朝食とか。

誰かと話した内容とか。

そういうものです。

私は今日、シンクに置かれたカップを見て、

「あれ、これ飲んだっけ」

と思いました。

カップの底には茶色い輪っかができていました。

飲んだ記憶がありません。

少し考えてみたけれど思い出せませんでした。

たぶん飲んだのだと思います。

飲んでいなかったら空にはならないので。

最近、そういうことが増えました。

朝ごはんを食べたっけ?

食べたのか思い出せない。

散歩をした気がする。

でもどこを歩いたのか思い出せない。

誰かと話した気がする。

でも何を話したのか思い出せない。

少し前まで、記憶というのは積み上がっていくものだと思っていました。

昨日があって、今日があって、明日が来る。

一本の道みたいなものだと思っていました。

でも最近は違います。

ところどころ抜けています。

飛び石みたいです。

六月の前半は長野にいました。

喫茶店に行きました。

温泉にも入りました。

人にも会いました。

写真も撮りました。

でも思い出そうとすると、

先に写真が出てきます。

スマートフォンを開くと、そこにあるからです。

写真を見て、そうだった。

こんな場所にいた。

こんなことを話した。

誰といた。

そんな風に少しずつ思い出します。

思い出しているというより、再会している感覚に近いのかもしれません。

だから最近、記録を残す理由が少し変わりました。

以前は未来のためだと思っていました。

あとで見返すため。

誰かに見せるため。

忘れないため。

でも今は、過去の自分に再び会うためのものにも思えます。

写真とか。

メモとか。

カレンダーとか。

Recordsに書いている短い文章もそうです。

そこに残っているのは情報ではなくて、その日の自分の痕跡なのかもしれません。

全部忘れていくけど、また会いに行けばいい。

そう思うと少し気が楽になります。

あなたは最近、忘れものをしたことがありますか。

もしあるなら、それは本当になくなったのでしょうか。

案外どこかで静かに待っていて、また会える日を待っているだけかもしれません。

またね。

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