朝。
カーテンの隙間から、灰色の光が入っていた。
雨はまだ降っていない。
でも、身体はもう知っている。
今日は少し、世界が重い。
頭の奥が鈍く、重く、圧迫される。
呼吸が浅い。
考えごとが、うまく前へ進まない。
普段なら流せることまで今日は引っかかる。
仕事。
生活。
人間関係。
未来。
気づくと、人生全体を悪い方向へ考え始めている。
ちゃんと生きていけるのか、みたいなこと。
これからどうなるんだろう。
寝不足の日に世界が荒れて見えるように。
高熱の日に未来が絶望的に見えるように。
人間は、「身体」と「思考」を完全には切り離せない。
普段なら整理できることまで、今日は全部「無理な気がする」に変換される。
でも、そういう日もある。
人生が急に壊れたわけじゃない。
ただ、脳と神経が少し疲れている。
世界を見るための、内側のレンズが曇っている。
だから今日は、無理に立て直さなくていい。
答えを出さなくていい。
大事な決断もしなくていい。
少しだけ、神経を静かな場所へ戻す。
部屋の光を落とす。
通知を閉じる。
温かい飲み物を、ゆっくり飲む。
息を吐く。
ちゃんと整えようとしなくていい。
深呼吸じゃなくてもいい。
浅い呼吸のままでも、少しずつ、身体は夜明けの方向へ戻っていく。
低気圧の日は、世界そのものが暗いんじゃない。
世界に触れる神経が、少し敏感になっている。
だから今日は、前に進む日じゃなくていい。
壊れないように、静かに通り過ぎる。
今日は、それだけでいい気がしている。
まだ雨は降っていない。

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