机の上に、コップを二つ置いた。
片方を窓際へ寄せた。
三秒ほど見て、元の場所へ戻した。
二つのあいだには、手のひら一枚分ほどの隙間があった。
椅子は机の正面にあった。
座らずに、背もたれへ手を置いた。
窓は閉まっていた。
カーテンの端を指で少し持ち上げる。
細い光が入った。
手を離す。
布は窓枠に沿って落ちた。
机の上には、コップが二つ。
紙が一枚。
鍵。
充電中の端末。
鍵を机の奥へ置く。
端末を壁際へ寄せる。
紙を手前へ動かす。
流しへ行った。
蛇口を開ける。
水が冷たかった。
指先まで濡らして、すぐ止めた。
戻る途中で、玄関を見る。
靴は揃っていた。
片方だけ、かかとが壁側へ向いていた。
そのまま通り過ぎた。
紙を持ち上げる。
端を合わせる。
親指を置いたまま、手を止める。
折らずに戻した。
コップの横。
机の端。
中央より少し手前。
そこで手を離した。
時計を見る。
七分進んでいた。
端末の画面をつける。
何も押さず、また消す。
冷蔵庫が鳴っていた。
音が止む。
外を走る車が一台、窓の向こうを通った。
遠くで一度、何かが閉まった。
そのあと、部屋の中では何も鳴らなかった。
椅子を引く。
床を擦る音がした。
手が止まった。
椅子を戻す。
今度は少し持ち上げて、同じだけ引いた。
音はしなかった。
座った。
二つのコップが、少し離れて並んでいる。
片方を持って、流しへ行く。
半分より少なく水を入れた。
一口飲む。
残りを流す。
空になったコップを、もう一つの横へ戻した。
右を少し手前へ寄せる。
戻す。
左を窓側へ動かす。
それも戻した。
二つは、最初とほとんど同じ場所に並んだ。
指先だけが、まだ冷たかった。
窓の外を見る。
光は、さっきより低いところにあった。
机までは届かず、床の途中で止まっている。
カーテンは、窓枠に沿って下りていた。
紙の角に指を置く。
少し押さえる。
離す。
折り目はつかなかった。
それから、机の上のものには触れなかった。
椅子から立つ。
窓の前まで歩く。
戻って、机の反対側へ回る。
二つのコップを見る。
机の端に手をつく。
動かさない。
玄関まで歩く。
何も触らずに戻る。
部屋の入口で止まった。
手前に紙。
その向こうに、二つの空のコップ。
椅子は正面を向いていた。
窓のところだけ、まだ明るかった。
時計を見る。
分針が、さっきより右へ傾いていた。
椅子の背に手をかける。
少しだけ斜めにする。
そのまま見る。
数秒して、正面へ戻した。
手を離す。
二つのコップには触れなかった。
紙にも触れなかった。
窓の近くまで歩く。
振り返る。
机の上は、さっきと同じだった。


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