映画を勉強していた、と話すと、よく聞かれる。
何本観ても、この質問はあまり簡単にならない。
好きだった映画と、影響を受けた映画は同じではない。
何度も観たい映画と、人にすすめたい映画も違う。
観た直後にはそれほど評価していなかったのに、何年も残り続けている映画もある。
だから、これはランキングではない。
その時々で入れ替わるし、これだけがすべてでもない。
ジャンルより、その映画が自分に必要な形をしているかどうかを見ることが多い。
それでも、自分の映画の好みを説明するなら、まずこのあたりから。
好きな映画は?
『Eno』
2024|監督:ゲイリー・ハストウィット|ドキュメンタリー
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音楽家・プロデューサー・ヴィジュアルアーティスト、ブライアン・イーノを扱ったドキュメンタリー。
でも、最初に惹かれたのは人物そのものより、この映画の仕組みだった。
『Eno』は、専用の生成システムによって映像、音声、音楽、場面の順序が組み替えられ、上映するたびに異なるバージョンになる。
昨日観た『Eno』と、今日観る『Eno』は同じではない。
映画館へ行けば、普通は「完成した一本」が上映される。
それを前提にしない映画だった。
内容だけではなく、
「映画は毎回同じでなければならないのか」
という問いまで作品の中に入っている。
映画という形式を、まだ変更可能なものとして扱っているところが好きだった。
『アバター』
2009|監督:ジェームズ・キャメロン|SF/アクション/アドベンチャー
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パンドラへ入ったときの感覚を覚えている。
森の発光。
身体の大きさ。
動物。
言語。
浮かぶ山。
人間とは違う方法で世界と接続しているナヴィ。
物語を追うより先に、「この世界はどこまで続いているのだろう」と思った。
元海兵隊員ジェイク・サリーは、人間とは異なる身体「アバター」を通して、その世界へ入っていく。
だから、世界を眺めるだけではない。
別の身体になって歩き、走り、触れる。
映画には、小さく作ることでしか成立しないものがある。
逆に、巨大に作らなければ届かない感覚もある。
『アバター』は後者を遠慮なくやる。
大きな世界を作る必要があるなら、大きくていい。
そのことを思い出させてくれる映画。
『パターソン』
2016|監督:ジム・ジャームッシュ|ドラマ
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朝、起きる。
仕事へ行く。
バスを運転する。
乗客の会話を聞く。
昼休みにノートへ詩を書く。
帰宅する。
犬を散歩させる。
バーで一杯飲む。
眠る。
次の日も、ほとんど同じ。
でも、本当は同じではない。
ニュージャージー州パターソンで暮らすバス運転手パターソンの一週間を、映画は大きく膨らませない。
車窓。
マッチ箱。
道端の会話。
ノートに書かれた言葉。
毎日の中にある小さな違いだけを拾っていく。
何か特別な出来事がなくても、見ていれば世界には十分なものがある。
「観察すること」自体が制作になることを思い出させてくれる映画。
『PERFECT BLUE』
1998|監督:今敏|アニメーション/サイコスリラー
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どこからが現実だったのか。
途中から、観ている側にも分からなくなる。
アイドルから女優へ転身した霧越未麻。
本人。
演じている役。
他人から見られている自分。
インターネット上に存在する「未麻」。
それらが少しずつ重なっていく。
撮影現場だと思っていた場面が現実へ戻り、現実だと思っていた場面がまた別の場面へ切り替わる。
説明によって混乱させるのではなく、編集そのものが足場をなくしていく。
観客も未麻と一緒に、何を見ているのか分からなくなる。
「現実」と「虚構」をきれいに分けず、その境界を映画の中で壊してしまう感覚が好き。
『ハニーランド 永遠の谷』
2019|監督:リューボ・ステファノフ、タマラ・コテフスカ|ドキュメンタリー
北マケドニアの山間部で、ハティジェは母親と暮らしながら蜂蜜を採っている。
取りすぎない。
蜂の分を残す。
自分が必要な分だけ受け取る。
その暮らしは、とても小さな均衡の上にある。
そこへ隣人一家がやって来る。
最初から誰かが悪いわけではない。
生活する人が増える。
必要なものが増える。
欲しいものも増える。
それだけで、それまで保たれていた関係が少しずつ変わっていく。
この映画は、人間と自然の関係を説明しない。
一人の暮らしを見続ける。
その結果として、自然、家族、経済、欲望まで見えてくる。
観察することでしか届かないものがある。
そう感じた映画。
『インターステラー』
2014|監督:クリストファー・ノーラン|SF/ドラマ/アドベンチャー
何光年も先へ行く話なのに、最後まで残るのは家族だった。
地球で人類が生き続けることが難しくなり、元パイロットのクーパーは、新しい居住可能な世界を探す旅へ出る。
宇宙へ行く。
惑星へ降りる。
数時間過ごす。
戻る。
地球では、何年も経っている。
旅を続けるほど、残してきた人の人生が先へ進んでいく。
「距離がある」ということと、「時間がずれる」ということが、同じ痛みになる。
ブラックホールや重力を扱う巨大なSFなのに、映画の中心にあるのは、一人の父親と一人の娘との距離だと思う。
巨大な概念を巨大なスケールのまま扱いながら、最後には個人的な関係へ戻ってくる。
そこが好きだった。
『17歳の瞳に映る世界』
2020|監督:エリザ・ヒットマン|ドラマ
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望まない妊娠をした17歳のオータムは、従妹のスカイラーとニューヨークへ向かう。
長距離バスに乗る。
駅で待つ。
病院へ行く。
質問される。
お金を数える。
眠れない。
映画が見せるのは、そういうことの積み重ねだ。
社会制度についての映画だけれど、制度を大きな言葉で説明しない。
一人の身体がどこへ移動しなければならないのか。
何時間待たなければならないのか。
誰に何を聞かれるのか。
その距離や時間として、社会の形が見えてくる。
隣にいるスカイラーの助けも、大げさな友情にはならない。
必要なときに隣にいる。
その小ささが残る。
『さよならの朝に約束の花をかざろう』
2018|監督:岡田麿里|アニメーション/ファンタジー
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長い寿命を持つ種族イオルフの少女マキアは、人間の赤ん坊エリアルを拾う。
育てる。
赤ん坊だった子どもが歩くようになる。
話すようになる。
大人になる。
母と同じ背丈になる。
やがて、母より年上に見える。
マキアの姿はほとんど変わらない。
一緒に暮らしていても、二人には同じ速度で時間が流れていない。
親と子。
出会い。
成長。
別れ。
「いつか別れる」と分かっていても、その途中の時間は消えない。
時間そのものが関係を変えてしまう物語には、かなり弱い。
『BPM ビート・パー・ミニット』
2017|監督:ロバン・カンピヨ|ドラマ
会議する。
意見が割れる。
怒鳴る。
笑う。
街へ出る。
抗議する。
走る。
踊る。
恋をする。
病院へ行く。
人が死ぬ。
1990年代初頭、AIDSへの無関心や対応の遅れに抗議するACT UP Paris。
『BPM』では、政治運動と個人の生活が別々のものとして存在していない。
会議室の言葉が街へ出て、街での行動が身体へ戻ってくる。
クラブで踊る時間と、病室の時間も同じ映画の中にある。
社会の問題は、最後には誰かの身体へ届く。
そのことを説明ではなく、映画の速度で感じる。
静かな映画だけが好きなわけではない、と話すときにも思い出す。
『言の葉の庭』
2013|監督:新海誠|46分|アニメーション/ドラマ
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雨の日だけ、二人は会う。
約束をしたわけではない。
高校生のタカオは、雨の朝に学校へ行かず、日本庭園で靴のスケッチをする。
そこにユキノがいる。
また雨が降る。
また同じ場所へ行く。
相手もいる。
それだけで、少しずつ関係ができていく。
この映画を思い出すと、まず物語より雨を思い出す。
葉に落ちる水。
濡れた石。
靴。
足元。
遠くを走る電車。
湿った空気。
人と人の距離を、台詞だけではなく天候や場所まで使って作っている。
46分という短さも含めて、一つの季節の中にいたような感覚が残る。
『EUREKA/ユリイカ』
2000|監督:青山真治|217分|ドラマ
バスジャック事件が起きる。
事件は終わる。
でも、人間の時間はそこで元には戻らない。
生き残ったバス運転手と兄妹。
言葉が出ない。
部屋にいる。
食事をする。
誰かと同じ場所で暮らす。
移動する。
また時間が過ぎる。
217分。
数字だけを見ると長い。
でも、この映画では、その長さ自体が作品の一部だと思う。
映画には出来事を圧縮する力がある。
数年を数分にすることもできる。
『EUREKA』は、その反対をする。
簡単には飛ばせない時間を、観客にも一緒に過ごさせる。
物語だけではなく、「三時間三十七分そこにいた」という感覚まで残る映画。
『LIFE!』
2013|監督:ベン・スティラー|アドベンチャー/コメディ/ドラマ
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雑誌『LIFE』で写真管理をしているウォルター・ミティは、いつも頭の中で別の人生を想像している。
現実では静かに働いている。
頭の中では、どこへでも行ける。
そんな人が、一枚の写真を探すために、本当に外へ出る。
飛行機に乗る。
海へ飛び込む。
知らない土地へ行く。
山へ向かう。
この映画では、ずっと写真を扱ってきた人が、写真の外側へ出ていく。
記録を見ること。
実際にその場所へ行くこと。
その違いを、冒険映画として見せてくれる。
それに、単純に観ていて楽しい。
観終わったあと、少し外へ出たくなる。
そういう映画も好きだ。
『ア・ゴースト・ストーリー』
2017|監督:デヴィッド・ロウリー|ドラマ/ファンタジー
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男が死ぬ。
白い布をかぶった幽霊になって、自分が暮らしていた家へ戻る。
そこから、ほとんど動かない。
残された人を見る。
その人が出ていく。
知らない人が住む。
家が変わる。
街が変わる。
時間だけが進んでいく。
家は、自分が住んでいるあいだは人生の一部に見える。
でも、自分がいなくなったあとも、しばらくそこにある。
壁には何も覚えていないように見えるのに、こちらはそこにあった時間を知っている。
不在を、人がいないことだけではなく、場所と時間の関係として扱っているところが好き。
小さな家から始まった映画が、最後には途方もない時間へ開いていく。
『君たちはどう生きるか』
2023|監督:宮崎駿|アニメーション/ファンタジー
FILMARKS・IMDb・WATCHA・映画.com・WATCH・OFFICIAL・TRAILER
初めて観たとき、全部は分からなかった。
今も、全部を説明できるとは思っていない。
母を失った少年・眞人が、不思議な塔から、生者と死者が入り混じる世界へ入っていく。
そこで何度も残ったのは、
産むこと。
生まれること。
死ぬこと。
何かを作ること。
作られた世界を引き継ぐこと。
そして、その世界から出て、生きている場所へ戻ること。
点数だけなら、「最も好きな映画」ではない。
それでも、このページには入れておきたい。
映画を好きになる理由と、映画を高く評価する理由は、必ずしも同じではない。
観た直後より、あとから長く残る映画もある。
『君たちはどう生きるか』は、自分にとってその一つ。
どんな映画が好き?
ここまで並べても、かなりバラバラだと思う。
生成システムによって毎回姿を変えるドキュメンタリー。
217分かけて傷のあとを追う日本映画。
毎日バスを運転する人の一週間。
AIDSアクティビズム。
17歳の身体。
幽霊。
雨。
宇宙。
巨大な青い身体。
異世界。
冒険。
アニメーション。
だから、
「静かな映画が好き」
「アート映画が好き」
「アニメが好き」
「SFが好き」
のどれか一つで説明すると、少し違う。
もちろん静かな映画は好きだし、アニメーションもSFも観る。
一方で、『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』『ジュラシックパーク』『ターミネーター』のようなシリーズものや、大作映画、ホラー、アクションも普通に観る。
たぶんジャンルより、その作品でしか成立しない世界や形式がある映画が好きなのだと思う。
『Eno』なら、毎回同じ映画である必要がない。
『PERFECT BLUE』なら、編集そのものが現実を不安定にする。
『パターソン』なら、反復の中にある小さな違いが映画になる。
『EUREKA』なら、時間を簡単に飛ばさない。
『アバター』なら、一つの世界を巨大な規模で成立させる。
『インターステラー』なら、宇宙の距離を親子の時間へ変える。
映画によって必要な大きさも、速度も、画面も違う。
静かである必要があるなら、静かでいい。
巨大な世界を作る必要があるなら、巨大でいい。
46分で終わってもいいし、217分かかってもいい。
意味が分からないなら、意味が分からないまま残ってもいい。
映画そのものが、自分の形式を必要としている作品に惹かれる。
好きな監督は?
これは作品以上に答えにくい。
一つの映画が好きだからといって、その監督のすべての作品が好きになるわけではない。
逆に、一本の代表作を選べなくても、その人が映画を作ると聞けば気になる監督もいる。
今のところ名前を挙げるなら、このあたり。
今敏
今敏の映画では、画面が切り替わるたびに「今まで見ていたものは何だったのか」と思うことがある。
現実。
夢。
映画。
テレビ。
記憶。
インターネット。
それらを別々の箱へ入れず、そのままつないでしまう。
自分は、その編集の感覚にかなり惹かれている。
物語だけを説明しても、今敏の映画を観た感覚にはならない。
『PERFECT BLUE』『パプリカ』
宮崎駿
宮崎駿の映画で好きなのは、物語より先に世界があるように感じるところ。
人が食べる。
風が吹く。
機械が動く。
森に何かがいる。
画面の外にも、その世界が続いているように見える。
『天空の城ラピュタ』と『君たちはどう生きるか』は全然違う映画だけれど、どちらも「この世界は映画が終わったあともどこかにありそうだ」と思う。
ジム・ジャームッシュ
出来事を増やさなくても映画になる。
そこに惹かれる。
人が歩く。
同じ道を通る。
誰かと話す。
少し違う一日が繰り返される。
そのくらいでも、人や場所の輪郭は出てくる。
『パターソン』を観ると、映画は必ずしも何かを起こさなくてもいいのだと思う。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ナイト・オン・ザ・プラネット』
ギレルモ・デル・トロ
怪物が出てくる映画はたくさんある。
でも、デル・トロの映画では、人間と怪物のどちらが異形なのか分からなくなることがある。
自分が惹かれるのはそこ。
造形や美術が好きなのもあるけれど、怪物を「倒す対象」だけにしない視線が好きなのだと思う。
『シェイプ・オブ・ウォーター』『パンズ・ラビリンス』『フランケンシュタイン』
ウェス・アンダーソン
ウェス・アンダーソンの映画を見ると、「映画は人工物である」ということを隠す必要はないのだと思う。
左右対称の構図。
作られたセット。
色。
文字。
衣装。
不自然なくらい整った画面。
自然に見せることではなく、作られていること自体を世界のルールにしてしまう。
その潔さに惹かれる。
『犬ヶ島』『グランド・ブダペスト・ホテル』『ムーンライズ・キングダム』
グザヴィエ・ドラン
ドランの映画では、感情が画面からはみ出してくるように感じることがある。
『Mommy /マミー』では、それが文字通り画面の形にまで触れている。
演技だけで感情を見せるのではなく、音楽、編集、画面比、速度まで使ってしまう。
映画の形式を、冷静な構造ではなく感情そのものとして使うところが好き。
『わたしはロランス』『マイ・マザー』『マティアス&マキシム』
クリストファー・ノーラン
時間や記憶のような、手では触れられないものを巨大な映画装置に変える。
そこがおもしろい。
複雑な構造そのものより、それをスクリーンの大きさや音、編集、物理的なスケールまで使って体験させようとすることに惹かれる。
『インターステラー』では、それが宇宙の時間と家族の時間につながっていた。
『TENET テネット』『ダンケルク』『インセプション』『ダークナイト』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
巨大な世界を作っているのに、人物を必要以上に大きく見せない。
そこが好き。
『メッセージ』の言語と時間。
『ブレードランナー 2049』の都市と記憶。
『DUNE』の建築や砂漠。
画面の中で、人間が世界より小さいまま存在している。
規模の大きな映画なのに、すべてを説明し尽くさないところにも惹かれる。
「好きな監督」というより、こういう映画を作る人の次の作品は気になる、という方が近い。
おすすめの映画は?
「おすすめの映画ある?」
だけだと、実はかなり困る。
何を観たい日なのかで、選ぶ映画が変わるから。
今なら、こんなふうに答える。
いつもと違う映画を観たいなら
→ 『Eno』
何も大きなことが起きない映画がいいなら
→ 『パターソン』
現実と夢の境目が分からなくなるものなら
→ 『PERFECT BLUE』
長い時間にそのまま浸かりたいなら
→ 『EUREKA/ユリイカ』
身体と社会の関係を観たいなら
→ 『BPM ビート・パー・ミニット』
→ 『17歳の瞳に映る世界』
時間と別れについて観たいなら
→ 『さよならの朝に約束の花をかざろう』
雨の日に観るなら
→ 『言の葉の庭』
知らない世界へ完全に入りたいなら
→ 『アバター』
宇宙まで行って、最後は人間の話がいいなら
→ 『インターステラー』
人がいなくなったあとの場所を見たいなら
→ 『ア・ゴースト・ストーリー』
明るい場所で怖い映画が観たいなら
→ 『ミッドサマー』
言葉と時間について考えたいなら
→ 『メッセージ』
冒険したいなら
→ 『天空の城ラピュタ』
美術ごと別の世界へ入りたいなら
→ 『シェイプ・オブ・ウォーター』
現実と夢をアニメーションで壊してほしいなら
→ 『パプリカ』
少し外へ出たくなる映画がいいなら
→ 『LIFE!』
ただ、本当に一本選んでほしいなら、
「最近こういう気分なんだけど」
「この映画が好きなんだけど」
「今日はホラーが観たい」
「何も起きない映画がいい」
「二時間以内がいい」
そのくらい教えてもらえると、かなり選びやすくなる。
千本以上観ても、「誰にでもおすすめできる一本」はまだ分からない。
たぶん、そんな映画はないのだと思う。
小さなガイド
何を観るか決められない日は、「良い映画」を探すより、今の自分に合う条件を少しだけ決める。
- まず、今使える時間を決める。
今日は90分くらいまでなのか、2時間以上でもいいのか。長さだけ先に決めると、かなり選びやすくなる。 - 次に、今ほしい感覚を一つだけ選ぶ。
静かに見ていたい。遠くへ行きたい。怖いものが観たい。知らない世界へ入りたい。誰かの生活を見ていたい。少し泣きたい。何も考えず楽しみたい。全部決めなくていい。 - 気になる作品が見つかったら、あらすじや評価を調べすぎない。
予告を一本見る、作品ページを少し読む、そのくらいで止めてみる。先に知りすぎると、映画そのものより評判を確認する時間になってしまうことがある。 - 再生して違うと思ったら、やめてもいい。
最後まで観ることを義務にしない。今日ではなかっただけかもしれない。 - 観終わったあと、すぐに点数を決めなくてもいい。
好きだった場面、残った音、妙に思い出す場所が一つあれば、それだけ覚えておく。 - 数日後にまだ残っていたら、そのとき初めて「なぜ残ったのか」を考える。
すぐには分からなかった映画ほど、あとから自分の中で大きくなることもある。
映画を選ぶときに、最初から「自分に合う一本」を当てる必要はない。
今の自分に少し引っかかったものを一本選ぶ。
それくらいで十分だと思う。


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